研究概要 |
半導体単結晶CdTe(111)を試料として用い、70フェムト秒のパルス幅のレーザー光を0.6mJ/cm^2の光強度で励起した際に発生する、コヒーレントフォノン状態相を26fsの時間ステップをもって時間分解X線回折測定した。X線回折強度は、レーザー光照射と伴にその強度が減少していくが、回折強度にはTHz領域の振動数の強度変調が観測された。観測された振動数は5.3THzであり、CdTe結晶のΓ点におけるLOフォノン振動数と等しいことが分かり、コヒーレント振動状態が生成していることが分かった。X線回折強度変調の大きさは、回折強度の約10%であり、X線回折の構造因子の時間発展の式を用いて解析すると、格子点まわりにおける原子変位量が3ピコメートルと見積もることが出来た。この原子変位量は格子定数の0.8%の大きさであることが分かった。また、同様のコヒーレントフォノン状態は、フェムト秒時間分解過渡反射率測定でも確認を行ない、X線回折と同じ周波数の振動が励起できることを確認した。また、このコヒーレント状態の寿命は2.4ピコ秒であることを測定から得た。またフェムト秒レーザーパルス列を用いた励起を行なうことによって、振動振幅の大きさを制御出来ることを、CdTe, GaAs, YBCOなどの試料を用い実証した。本研究の結果から、コヒーレントフォノン状態において誘電率変化だけでなく、実際に結晶格子が大規模に位相を揃えて運動しており、その変位振幅を100フェムト秒に時間精度とピコメートルの空間精度で求めることが出来るようになった。
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