19年度は、1.ナノギャップを用いた極微小単一電子トランジスタ(SET)の作製と特性評価、2.磁壁に伴う電気2重層検出用の素子の作製、3.強磁性単一電子箱の試作、さらに4.微小強磁性トンネル接合で磁化反転に伴う異常トンネル磁気抵抗効果の機構解明に向けた素子作製、を行った。以下それぞれについての実績を述べる: 1.昨年度導入したエレクトロマイグレーションによるナノギャップ作製技術を用いて、金細線に作った10nm程度の亀裂(ナノギャップ)の上にCo微粒子を蒸着し、室温でも単一電子の帯電効果に起因する非線形伝導特性を持つ極微小SETの作製に成功した。今後この素子での磁気伝導特性を調べ、磁化反転のクーロン閉塞の有無等を調べる。 2.昨年度導入したくびれをもち磁壁をトラップできるCo細線のくびれの両側にCr製のSETをそれぞれ容量結合して磁壁両側の静電位変化を観測できる素子を試作した。この際、100nm程度の位置ずれでの電子線重ね描画技術も導入した。今後SETを電荷計として動作させ、磁壁に伴う電気2重層の検出を目指す。 3.外部回路とトンネル接合1個で結合したCo細線を単一電子箱とし、この動作をCr製のSETで検出する素子を試作した。さらにCr製のSETの磁気伝導特性を評価した。(ただし、予想とは異なりCr製のSETにおいても磁気応答が見られた。この点は、今後さらに詳しく調べていく。) 4.強磁性2重微小トンネル接合でみられる異常トンネル磁気抵抗効果の機構検証を目指して、昨年度導入したGeマスクプロセスを用いて、常磁性/強磁性/強磁性(Cr/Ni/Co)の電極組み合わせをもつSETを試作した。
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