初年度・昨年度に続いて本年度も研究計画で想定した以上の成果を順当に挙げることができた。 金属電極で挟まれた単一分子や原子鎖の電子輸送における電子-フォノン相互作用の効果および単一吸着分子の非弾性トンネル分光の理論構築を更に発展させ、これらの系で微分コンダクタンスが正負となることの一般的理論を確立した。この成果は物理系専門誌で最も評価の高いことで知られるPhysical Review Lettersに掲載された。 また、フェムト秒レーザパルス励起で金属内に作られた過渡的なホットエレクトロンからの熱移動によって、吸着分子の振動温度が過渡的に上昇し、吸着分子の運動が誘起される"表面フェムト光化学反応"において金属内のホットエレクトロンと強く結合するモードと運動に関与する反応座標モードとの相互作用が重要な役割を果たすことを白金表面における一酸化炭素分子と原子状酸素のホッピング運動に関する実験結果の解析に適用することで明らかにした。これらの研究成果を発表した論文の中でPhysical Review Bに掲載された2編の論文はいずれも同誌各号に掲載された論文で注目の論文のみが厳選されるアメリカ物理学会が出版するバーチャルジャーナルにも掲載され、さらにJournal of Physics:Condensed Matterに掲載された論文は注目論文としてIOP SELECTに選ばれた。
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