研究概要 |
2次元電子系を近接して2層に配置した量子ホール状態は、層間のクーロン相互作用により2層の電子が互いに協力しあって新しい量子ホール状態を形成する。特に層間相互作用の強い場合、ランダウ準位占有率ν=1および2の量子ホール状態は2層の電子密度差を任意に変えても安定に存在する。本研究では,2層系ν=1量子ホール状態で発見した擬スピン・ソリトン格子相と考えられる新しい状態について,面内磁場に対する伝導特性の異方性を測定した.量子ホール効果におけるソリトン励起の観測は全く新しい発見であり,また擬スピンのソリトン励起としても新しいものであり,国内外においても我々の見出した状態関して研究は行われていなかったので,論文として発表した.試料の成長は,NTT物性科学基礎研究所の研究協力者と行い,2層系試料に量子ホール効果測定のための電流、電圧端子を設けるとともに、電子密度調整をするためのショットキーゲートを試料の両面に取り付けた試料を製作した。これまでに製作したデバイスは、数ケ月スケールでの電子密度のドリフト現象を示したが、試料アニールの方法を工夫して,ドリフトの少ないゲートの製作ができるようになった。希釈冷凍機の混合器内で,超伝導ステッピングモーターにより,試料を0.05゜の分解能で1軸回転するゴニオメータと,14.5テスラ超伝導マグネットを有する装置を使って,これまで使用してきた試料で磁気抵抗極大現象の電子密度差依存性を測定した.さらに新たに製作したトンネリング・ギャップの異なる試料での,磁気抵抗の極大現象の測定も行った.希釈冷凍機の混合器内で,超伝導ステッピングモーターにより,試料を0.05゜の分解能で2軸回転するゴニオメータと,19テスラ超伝導マグネットを有する装置を東北大学より移設した。設置作業を進めてきたスプリット横型超伝導マグネットとマイクロ波測定装置を組み合わせた希釈冷凍機が完成したので、今後2層系量子ホール効果のマイクロ波に対する応答を調べる。
|