研究課題
本研究では、半導体量子構造を対象として、フェムト秒パルスレーザー励起によって誘起されるテラヘルツ(THz)コヒーレント現象(コヒーレントフォノンとブロッホ振動)からのTHz電磁波発生機構を時間領域コヒーレント振動の観点から解明することを目的としている。平成18年度(初年度)の研究実績概要は以下の通りである。1.GaAs/AIAs多重量子井戸構造におけるコヒーレントGaAs型LOフォノンからのTHz電磁波発生機構THz電磁波の時間領域信号は、低温成長GaAs薄膜の上に形成したダイポールアンテナで光ゲーティング法を用いて検出した。(1)THz電磁波強度の多重量子井戸周期数依存性に関する系統的な測定から、電磁波の電場が周期数に比例することを見いだした。この結果は、多重量子井戸の各層において生成されたコヒーレントLOフォノンの位相が揃った重ね合わせによって、THz電磁波が放射されていることを示している。(2)THz電磁波強度の温度依存性の測定結果を解析し、熱励起フォノンのランダムネスによって電磁波強度が低下することを明らかにした。(3)低温領域でのTHz電磁波強度を定量的に測定し、通常のパルス励起強度条件でmW程度の高強度が実現できることを検証した。(4)THz電磁波の生成機構として、誘導ラマン散乱過程が大きく寄与しているという結果が得られた。2.GaAs/AIGaAs超格子におけるワニエ・シュタルク(WS)局在とブロッホ振動(1)電場変調反射分光法により、ブロッホ振動を生じさせるWS局在の形成過程を明らかにした。さらに、WS局在状態間の共鳴結合条件において、光入力-光電流の双安定性動作が実現できることを見出した。(2)反射型ポンプ・プローブ分光法により、ミニバンド状態の励起子量子ビートからWS局在状態のブロッホ振動への移行過程の検出に成功した。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
Journal of Applied Physics vol.101
ページ: 043512-1-043512-5
Physica Status Solidi A vol.204,No.2
ページ: 518-521
Journal of Luminescence vol.122-123
ページ: 841-843
Journal of Applied Physics vol.100
ページ: 103527-1-103527-7
Physica Status Solidi B vol.243,No.14
ページ: 3825-3828