研究課題/領域番号 |
18340091
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
杉崎 満 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (20360042)
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研究分担者 |
藤井 律子 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 博士研究員 (80351740)
橋本 秀樹 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50222211)
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キーワード | 超高速分光 / コヒーレンス / 光合成 / 色素蛋白超分子複合体 / カロテノイド / クロロフィル / 高効率 / エネルギー移動 |
研究概要 |
光合成細菌の光合成系は、自然が創造した超高速(100フェムト秒以下)かつ高効率(〜100%)な光エネルギー変換機構を達成するための本質的な条件を満たすバイオナノデバイスである。その機構を解明することは太陽光エネルギーの有効利用という観点から眺めた場合、次世代のクリーンエネルギー変換器の基盤技術となり得る。本研究は、これまで申請者が行ってきた研究結果に基づき、光合成研究の分野で見落とされてきた電子系、及び分子系の持つ「コヒーレンス」に着目し、光合成細菌の光合成系において達成されている高効率エネルギーの起源を明らかにし、更にはエネルギー伝達効率を人為的に制御する技術の確立を目指す。 前年度に引き続きH19年度は、アンテナ色素蛋白複合体において緑色領域の光捕集を行うカロテノイドに着目し、そのコヒーレント光学応答を調べた。試料としては、代表的カロテノイドであるβ-カロテンを採用した。トロント大学との共同研究により過渡回折格子信号に強い励起波長依存性があることを見出した。実験で得られた結果は、励起パルス形状を適切に評価することにより上手く再現できることを理論的に示した。また、興味深い点は、測定結果を説明するためには、一重項励起状態間に、新たな中間状態を導入する必要があることを明らかになったことである。これまで、カロテノイドの中間状態に関しては世界中で多くの議論がなされてきたが、明瞭な実験結果として現れた最初の例と考えられる。 またH19年度は、カロテノイドが捕獲した光エネルギーの伝達先であるクロロフィルに対しても、コヒーレント光応答信号の検出に成功した。クロロフィル分子において、逆過渡回折格子信号が過渡回折格子信号と同程度の強度で現れることが見出された。溶媒効果を取り入れることにより、実験で得られた光学応答を計算により再現できることを示した。
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