研究概要 |
本研究は, これまで申請者が行ってきた研究結果に基づき, 光合成研究の分野で見落とされてきた電子系, 及び分子系の持つ「コヒーレンス」に着目し, 光合成細菌の光合成系において達成されている高効率エネルギーの起源を明らかにし, 更にはエネルギー伝達効率を人為的に制御する技術の確立を目指すものである。そのために, 以下4つの研究項目を計画段階で設定した。 (1) β-カロテンホモログ体を測定対象とし, 申請者自らが開発したサブ20フェムト秒極短光パルスシステムを用い, 縮退四光波信号を中心としたコヒーレント信号を観測する。また, カロテノイドが捕獲した光エネルギーの伝達先であるクロロフィルに対しても, コヒーレント光応答を調べる。 (2) 測定対象を, 精密有機合成により作製した天然には存在しない共役鎖長の異なるカロテノイドに拡張し, 同様の測定を繰り返し, コヒーレンスとカロテノイドの共役鎖長の関係を明らかにする。 (3) 光合成細菌から単離精製したLH2, 及びLH1-RCコア複合体, さらには光合成膜へと測定対象を段階的に拡張し, カロテノイドが持つ長い位相緩和時間を反映し, バクテリオクロロフィルへコヒーレントにエネルギーが高効率に伝播していく様子を観測する。 (4) コヒーレント制御の手法により, カロテノイドの特定の分子振動モードのみを選択的に生成し, クロロフィルへのエネルギー伝達効率が人為的に制御可能であることを実証する。
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