本年度の研究では、Bi2212系高温超伝導体のSTM/STS測定から超伝導状態(T<Tc)と擬ギャップ状態(T>Tc)で非分散性のチェッカーボード型電荷秩序とフェルミ準位でのギャップ構造を詳しく調べた。その結果、非分散性の電荷秩序の周期はTcの上下で同じであり、ともにギャップ構造の空間的な不均一性と密接に関連していることから、電荷秩序はTcの上下で変化しないことを確認した。また、Bi2201系高温超伝導体め超伝導状態における非分散性のチェッカーボード型電荷秩序とギャップ構造の特徴を調べ、非分散性の電荷秩序がピン止めされて静的なものになると、空間平均した擬ギャップの大きさが著しく増加し、角度分解光電子分光(ARPES)実験のアンティノードにおける擬ギャップの大きさと一致することが分かった。また、STSスペクトルに、ARPES実験から報告されているアンティノードでの超伝導ギャップに対応する位置にショルダー状の異常が現れることから、非分散性の電荷秩序がピン止めされると超伝導ギャップと擬ギャップの大きさが著しく異なってくることが明らかとなった。また、超伝導ギャップは、擬ギャップと違って非分散性の電荷秩序がピン止めされても空間的に均一のままであり、大きさもほとんど変化しない。このことは、非分散性の電荷秩序のピン止めとアンティノード付近の擬ギャップの増大とが密接に関係していることを示す興味深い結果である。現在、不純物を添加して非分散性の電荷秩序を積極的にピン止めしたときの擬ギャップの振る舞いや、超伝導に与える影響を調べている。
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