研究課題
UBe_<13>は1980年代前半に発見された超伝導転移温度T_c=0.86K、電子比熱係数γ_e=-1.1J/mol・K^2の重い電子超伝導体である。当初より異方的超伝導の可能性が指摘されていたが、純良な単結晶作成の難しさなどから、20年以上研究が続けられた現在でもその超伝導の本質はほとんど理解されていない。近年芳賀らによってUBe_<13>の大型単結晶試料が育成された。本年度は、この試料を用いて常伝導状態の角度分解NMR測定から、UBe_<13>の電子状態や超微細磁場の起源を明らかにすること、上部臨界磁場測定をおこない、超伝導基本特性を明らかにすることを目的とした。340mKまで温度を下げ交流磁化測定を行い、超伝導上部臨界磁場をしらべたところ、これまでに報告されている超伝導相図を再現することが明らかとなった。一方、微視的な観点から情報を得るために、磁場角度分解NMRをおこなったところ、NMR線幅は、これまでに報告されている多結晶試料の100ガウスにくらべ8ガウスと極めて狭く、また不純物による影響も見られないことから、微視的な観点から良質であることが明らかとなった。また、磁場角度分解実験により、超微細相互作用の異方性は、Be-2p軌道の局所スピン密度によって理解され、2p軌道が伝導バンドに寄与していることがあきらかとなった。超伝導状態についても予備的な実験を進め、ナイトシフトの振る舞いからスピン三重項超伝導状態の可能性を示唆する結果をえた。本年度末に希釈冷凍機が導入されたため、来年度は、100mK以下の低温での超伝導状態のNMRを行い、詳細な超伝導対対称性について調べる予定である。
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Journal of the Physical Society of Japan, 76・2
ページ: 024705/1-9
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Journal of Physical Society of Japan, 76・Supplement
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