研究課題
UBe_<13>は1980年代前半に発見された超伝導転移温度T_c=O.86K、電子比熱係数γ_e=1.1J/mol・K^2の重い電子超伝導体である。本研究の目的は、UBe_<13>純良単結晶試料を用いた極低温下での角度依存NMR実験を行い、多極子自由度による重い電子超伝導発現機構の可能性について明らかにすることである。本年度は、高磁場高分解能角度分解NMR装置の立ち上げ、および、それを用いたNMR測定により超伝導状態を明らかにすることである。12月までに高分解能磁石用角度分解NMR装置を立ち上げた。6テスラの磁場を[111]方向に印加し2KまでのBe-NMR信号の測定を行ったところ、幅広い温度範囲で1/T_1^∝T^<1/4>の温度依存性が確認された。この振る舞いは、スピン揺らぎによる量子臨界点近傍において理論的に予想されている結果と良く一致し、常伝導状態は非フェルミ流体状態であることを示す。一方低磁場では、2K以上の温度で1/T_1^∝T^<1/2>の温度依存性を示し、30K以上で1/T_1=一定となる。比較のため、非フェルミ流体的挙動を示すYbRhSbのSb-NMR緩和率の温度依存性を調べたところ、ゼロ磁場では1/T_1^∝T^<1/2>の振る舞いが見られたが、磁場を印加すると、UBe_<13>とは異なり1/T_1^∝Tの関係が見られた。これは磁場によって非フェルミ流体状態が抑えられ、フェルミ流体状態となることを示唆する。本年度のUBe_<13>の成果に関しては、実験環境の整備を中心に、並行して高磁場実験を行ったたが、口頭発表2件のみであり、雑誌発表に多極子関連でCe化合物の発表のみとなった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Journal of the Physical Society of Japan, Supplements A 7 7
ページ: 285-287
ページ: 288-290