本研究の目的は、UBe_<13>純良単結晶試料を用いた極低温下での角度依存NMR実験を行い、多極子自由度による重い電子超伝導発現機構の可能性について明らかにすることである。これまでに、低磁場のNMR実験からBeサイトには、20面体カゴを形成するBe(II)サイトとBe(I)サイトが存在することを明らかにしてきた。本年度は、高磁場高分解能角度分解NMR装置の立ち上げをおこなった。ナイトシフトの測定を行ったところ、RF表面インピーダンス測定で異常が見られるT*の温度までは、方向によらずナイトシフトは温度に対し一定であるが、T*以下の温度では、磁場を[111]方向に印加した場合は、ナイトシフトは強磁性的な増大を示し、一方、磁場を[001]方向に印加した場合は減少する。また、T*は磁場強度を上げるとともに減少することから、超伝導相内に何らかの相が存在することを示唆する。これらの結果はスピン1重項対をもつs波やd波対状態では説明することができない。また単純なスピン三重項p波状態でも説明することができず、超伝導秩序変数に内部自由度を持った特異な超伝導状態であることを示唆する。また、7テスラの高磁場でBe(I)サイトとBe(II)サイトからの信号を分離し、Be(I)サイトのNMR実験を行った。17テスラ用角度分解NMRプローブを作成し、磁場を[111]方向に印加した状態で、Be(I)サイトのNMRを1.5Kまで行ったところ、幅広い温度範囲で1/T_1=const.がみられた。高磁場で、磁気的な性質が変わっていることを示唆する。関連物質として、PrOs_4Sb_<12>のNMR測定を行った。ナイトシフトおよびNMR緩和率が磁場印加とともに抑制される。このことは、結晶場をかいしたエキシトンが、重い電子状態に与していることを示唆する。
|