立方対称構造をもつUBe_(13)は、1982年に発見された重い電子超伝導体である。電子比熱係数は1000mJ/molK^2と極めて大きく、様々な研究から、スピン三重項超伝導状態の可能性が議論されているが、明確な証拠は得られていない。常伝導状態では非フェルミ流体的な振る舞いが報告されており、5f電子由来の多極子自由度が関与した多チャンネル近藤効果による可能性が理論的に議論されている。この物質は、UサイトをThで置換すると、超伝導2段転移示すことから、縮退した超伝導秩序変数の存在が考えられており、多極子自由度との関係に興味が持たれている。 UBe_(13)の物性研究における大きな問題点は、良質な試料ができないという点であり、超伝導対パリティ決定も含め、これまでに大きな進展はなかった。芳賀らにより純良単結晶試料の合成が行われ、精密ナイトシフト実験による超伝導状態の解明がこの系の課題である。 本研究の目的は、純良単結晶試料を用いた極低温下での角度依存NMR実験を行い、多極子自由度による重い電子超伝導発現機構の可能性について明らかにすることである。
|