研究概要 |
磁性体に一定温度で磁場を加えると,エントロピーは減少する.また断熱状態で磁場を取り除くと,温度が下がる(磁気熱量効果).われわれは以前強磁性から常磁性へ一次転移する物質が大きな磁気熱量効果を示す可能性を指摘し,MnAs_<1-x>Sb_xが室温で巨大磁気熱量効果を示すことを見出したが,2004年にブラジルのグループがMnAsに0.2GPa程度の圧力をかけると,等温磁気エントロピー変化ΔSMが飛躍的に増大し,常圧の場合の5倍以上に達することを報告した.彼らはこの現象を超巨大磁気熱量効果と呼んだが,その起源は十分解明されていない.本研究では超巨大磁気熱量効果を実験的に検証し,その物理的起源を明らかにすることを目的とする.本年度の結果は以下のとおりである. 1)新しい超伝導マグネットを導入しCu-Ti合金クランプセルを用いた引き抜き型の高圧下磁化測定装置の製作を行った.現在最大磁場12T,最大圧力1.2GPa,温度範囲4.2K〜320Kでの磁化測定が可能となっている. 2)MnAsについて圧力下の磁化測定を開始している.ΔS_MはMaxwellの関係式から磁化の温度変化率を磁場で積分することによって得られるが,現在のところ,0.1GPa程度ではΔS_Mが飛躍的に増大するということは見られていない.今後さらに測定を進める予定である. 3)MnAsに元素置換を行うことによって化学的圧力効果で磁気熱量効果が増大するかどうかについて調べている.Ti置換やCo置換ではΔS_Mが減少することが明らかになった. 4)一次転移の場合Maxwellの関係式からΔS_Mを評価するだけでは危険であるので,Clausius-Clapeyrinの式を用いてΔS_Mを評価する方法を確立し,Co(Si_<1-x>Se_x)_2に適用した. 5)本研究では他の一次転移物質の磁気熱量効果の圧力依存性も調べるため,La(Fe_<1-x-y>Co_xSi_y)_<13>の試料を作製し,常圧における磁気熱量効果を調べた.
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