研究課題/領域番号 |
18340108
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
真庭 豊 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (70173937)
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研究分担者 |
松田 和之 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (60347268)
門脇 広明 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70194876)
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キーワード | NMR / カーボンナノチューブ / アイスナノチューブ / 計算機実験 / 相転移 / 水 |
研究概要 |
原子スケールの微細な空間内に閉じ込められた物質は、バルクにない特異な性質を示し、興味深い。本研究では、カーボンナノチューブ、及びその関連物質のナノ空洞内部に閉じ込められた物質系の構造と相挙動を理論と実験の両面から明らかにすることを目的としているが、本年度は単層カーボンナノチューブ(SWCNT)内の水の誘電特性の研究において、以下の通り、顕著な進展があった。 直径が1.1〜1.5nmのSWCNT内の水は低温でアイスナノチューブと呼ばれるバルクにない水の結晶(氷)を形成する。アイスナノチューブは、5〜8個の水分子が水素結合を介してリングを作り、このリングがSWCNTのチューブ軸にそって配列した水の結晶である。 本研究では、このアイスナノチューブの誘電特性を電界(電場)中、温度領域100〜350Kにおいて分子動力学計算を行い、アイスナノチューブが特異な性質を示す世界最小の強誘電体であることを明らかにした。この誘電体では、外部から電圧(電界)を加えることにより水分子を構成している水素原子の配列が反転して、電気分極が異なる複数状態を実現できる。そのため、多値メモリや微小化が進む電子素子の誘電材料としての応用の可能性が期待できる。また本誘電体は、微細な空洞へ分子を閉じ込めて、通常では存在しない新たな分子配列を作ることにより初めて実現したものであり、今後、同種の方法による、新たな機能的ナノ誘電体の創製が期待できる。 本研究成果は、科学誌ACS nanoに「Dielectric properties of water inside single-walled carbon nanotubes」のタイトルで発表された.
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