研究概要 |
(1)平成18、19年度に行ったLa_<2-x>Sr_xCuO_4の(x=0.08,0.15,0.30)の試料について、高分解コンプトン散乱実験の再測定を行った。c面上で10方位のコンプトン・プロファイルを測定し、2次元再構成によりc面上に射影した2次元電子運動量密度を得て、さらにLCW法により2次元電子占有数密度を得た。再測定の結果は以前の結果を再現し、ホールが占有する軌道状態とフェルミ面形状はホール濃度によって変化することが確認された。これらの実験データから、ホール軌道とフェルミ面に関する情報を得るために、Northeastern大学のArun Bansil教授のグループによる第1原理バンド計算結果と比較した。平成21年2月にNortheastern大学で、測定したLa_<2-x>Sr_xCuO_4(x=0.0,0.08,0.15,0.3)のデータについて議論を行い、最適ホールドープ量x=0.15のフェルミ面形状に関して実験と理論は良い一致を示すことが確認されたが、オーバードープ領域のフェルミ面形状や全ホール濃度でのホール軌道状態に関しては十分な一致は得られなかった。不一致の理由は、理論計算ではリジッド・バンド近似を採用しているためと考えられる。 (2)平成21年2月には、(Pr,Ca)MnO_3の軌道状態を磁気コンプトン散乱実験で視覚化する試みを、Anirruddha Deb博士(ミシガン州立大学)と行なった。軌道状態を反映した異方性が十分な精度で確認された。現在、解析を行っている。
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