(1)1次元スピンレスフェルミオン系の形状因子および有限温度相関関数 1次元のスピンレスフェルミオン系に対する形状因子の解析解を導出し、さらに有限温度における相関関数の多重積分表示を得た。これらの成果は、スペクトル関数の具体的評価への足がかりとなり、角度分解光電子分光等を用いた光吸収スペクトル実験に対する定量的な理論的検証が期待される。 (2)強磁性XXZ鎖のキンク基底状態における相関関数の厳密解 強磁性XXZ鎖は、すべてのスピンがそろった状態が基底状態となるが、この基底状態の他、ある種のキンク状態も基底状態となりうることが知られている。我々はこの基底状態に対するさまざまな相関関数、すなわち、縦・横スピン-スピン相関、EFPと呼ばれるある区間のスピンがそろう確率、AEFPと呼ばれるある区間のスピンがネール状態になる確率、およびエンタングルメントエントロピー等を厳密に求めた。この結果、長距離において、この基底状態では、スピン-スピン相関は指数関数的に減衰し、EFPおよびAEFPはガウシアン的に減衰することを見出した。 (3)多成分非対称単純排他過程の動的性質およびスペクトル解析 非対称単純排他過程と呼ばれる確率過程模型の動的性質の研究を行った。これまで、1成分(粒子の数が1種類)の場合はよく研究されていたが、我々はこの模型を多成分の場合に 拡張し、その動的性質に関する研究を行った。この結果この模型がKPZユニバーサリティーで記述されることを見出した。さらに、この過程のマルコフ行列のスペクトルの解析を行った。 (4)1次元エニオン模型の相関関数の研究や境界を持つ1次元ボース気体の有限温度における性質を研究した。
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