研究課題/領域番号 |
18340115
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松下 貢 中央大学, 理工学部, 教授 (20091746)
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研究分担者 |
香取 眞理 中央大学, 理工学部, 教授 (60202016)
田口 善弘 中央大学, 理工学部, 教授 (30206932)
松山 東平 県立新潟女子短期大学, 専攻科・食物栄養専攻, 非常勤講師 (00047200)
須田 淳一郎 佐世保工業高等専門学校, 教授 (40226577)
山崎 義弘 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (10349227)
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キーワード | パターン形成 / 細菌 / 結晶成長 / フラクタル / べき乗分布 / 対数正規分布 |
研究概要 |
自然界に見られるパターンは多種多様である。しかし、それらのパターンが自然法則に従ってできている限り、パターンの構造にも統計にも何らかの規則性・普遍性が秘められているはずであり、その解明を目的としている。本年度の研究実績は主として3種類に分けられる: (1)栄養が豊富で固めの培地で成長するバクテリアコロニーは特徴的な粗い成長界面を呈する。これまではこの成長界面は比較的単純な自己アフィンフラクタルで特徴付けができるものと判断していた。しかし、より詳しい解析を行った結果、この成長界面はマルチフラクタルの一種であるマルチアフィン性を呈していることがわかった。界面付近で細菌細胞が異常に長い形態を取り、複雑に絡み合いながらコロニーを成長させることが原因であるが、マルチアフィン性を呈する詳しい機構は不明で、その解明には引き続き研究が必要である。 (2)比較的侵食が行き届いた山岳地形はバースト指数Hで特徴付けられる自己アフィンフラクタルであり、高さを指定したときの等高線ループ全体や1本だけのループのフラクタル構造、それにいろいろなサイズのループの統計の間に簡単なスケーリング則があることが、これまでの私たちの研究で明らかにされてきた。そこで、比較的大規模な計算機シミュレーションでHを指定した地形曲面を生成し、そのスケーリング則を確かめた。さらに、具体例として、長崎県佐世保市近辺の九十九島地域を取り上げ、そのスケーリング則が実際の地形でもよく成り立っていることを確かめた。 (3)自然界で観察されるいろいろな統計現象において、代表的な分布関数はべき乗分布と対数正規分布で、特に前者のべき乗分布はフラクタル現象への興味とあいまって注目されてきた。しかし、これまでべき乗分布として議論されてきたいろいろな例の分布関数をより詳しく検証すると、必ずしもべき乗分布と断定できない場合があることに気付いた。そこでいろいろな例について再度検証することにした。本年度検証した例を列挙すると、老人病患者の介護期間分布、生物の寿命分布、咀嚼による食片サイズ分布、国別のGDP,軍事費、AIDS/HIV患者数などの分布であり、これらはいずれも対数正規分布を呈する。対数正規分布は対数の世界での正規分布であり、そのためにそうなる理由がある意味ではっきりしている。特に興味深いのは、県別の人口の推移であり、戦後まもなくは国内の混乱を反映して全体が対数正規分布を呈していたのが、戦後の経済復興を反映して大部分の人口の少ない県と一部の人口の多い都道府県とで人工の二層分離を起こし、それらが見事に2対数正規分布で記述できることである。今後は市・長・村それぞれの人口分布の特徴付けをも行い、社会科学者との議論を行うつもりである。
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