自然界に見られるパターンは多種多様である。しかし、それらには構造的にも統計的にも何らかの規則性・普遍性が秘められていることが多く、本研究はその解明を目指している。本年度の研究実績は主として2種類に分けられる: 1.バクテリアは培地の固さと栄養濃度に応じて多彩なコロニーパターンを形成する。今年度は主として緑膿菌のモルフォロジーダイアグラムの確立及び大腸菌とプロテウス菌の周期的成長の特性の定量的測定を行った。特に、大腸菌とプロテウス菌の周期的成長に関して、共焦点レーザー顕微鏡を駆使して、菌密度の時間的空間的変化を追い、周期的成長のダイナミクスを追求した。 2.自然現象に限らず社会現象も含めた、様々な複雑系で観察されるいろいろな統計現象における代表的な分布関数はべき乗分布と対数正規分布である。そこで昨年度までの成果として、複雑系では対数正規分布がより基本的な分布関数であることを基礎付けし、多くの例を提示した。本年度はそれを踏まえて、市町村人口分布の時間変化に見られる特徴を明らかにした。また、ガウス分布の典型とされてきた私たちの身長分布でさえ、対数正規分布がよりよいこと、ただし思春期の2年ほどだけはガウス分布の方がフィッティングがよりよくなることを見出した。身長の平均値は進化が強く影響して遺伝的に強く制限されるが、平均値の周りの揺らぎは人体が成長する複雑系であるために対数正規分布を呈する。思春期は大人への準備として遺伝的制限としての規格化を受けるためであろう。
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