研究概要 |
本研究の目的は、光と冷却原子集団との間に多次元のエンタングルメントを生成し、かつ制御する手法を開発することにある。冷却された原子集団に光を照射し、単一のアンチストークス光子を検出することで、原子集団内に単一の励起を生成することができる。その後、逆過程を誘起すれば、今度は単一のストークス光子を発生させることができる。これらアンチストークス光子とストークス光子の間の軌道角運動量相関を検出することで、原子系とアンチストークス光子との間の多次元エンタングルメントを検証することを目的として、研究を行った。ここで生成されたエンタングルメントは、外部運動状態の量子テレポーテーションへの応用、あるいは量子通信において通信容量を増やす新しい手段として活用が期待できる。平成18年度、我々はレーザー冷却された原子集団とアンチストークス光子との間に2×2次元の軌道角運動量に関するエンタングルメントが生成されていることを確認することに成功した。具体的には量子トモグラフィーを行い、再構成された密度行列からEntanglement of formationを評価し、0.76>0という結果を得た。平成20年度は、空間位相変調器を用いることで、軌道角運動量1=-1,0,1の各種重ね合わせ基底に対する測定を実現し、これにより3×3次元の量子トモグラフィーを行った。最尤法によって再構築された密度行列より最大限エンタングルした状態に対するフィデリティーを算出し、そこからシュミットナンバーを計算した。シュミットナンバーとは、系が何次元のエンタングルメント状態にあるかを判定するパラメーターであり、今回我々は、世界ではじめて3、つまり多次元のエンタングルメントを確認することに成功した。以上、当初予定していた実験研究にすべて成功することができた。
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