研究課題/領域番号 |
18340122
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川端 和重 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20261274)
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研究分担者 |
芳賀 永 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (00292045)
根本 幸児 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (60202248)
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キーワード | 細胞 / 細胞コロニー / 走査型プローブ顕微鏡 / 力学的応答 |
研究概要 |
本研究では、細胞運動や細胞集団(コロニー)の形態形成機構(傷の修復、胚の形態形成などの特定の形態を個々の細胞が連携して形成する機構)を明らかにするために、細胞および細胞コロニーの力学的・能動的性質(記憶効果)に着目し、細胞や細胞コロニーにいろいろなパターンの力学的変形刺激を加えた場合の応答を調べた。本年度は、昨年度構築した走査型プローブ顕微鏡(SPM)と変形駆動装置を組み合わせた装置を用いて1細胞における履歴現象の測定をおこなった。培養環境における細胞に以下のパターンの力学的刺激を与え、SPMによって細胞内張力の変化を調べた:矩形変形(伸張維持時間;30分)を加えると細胞は急激な張力の増加の後に緩やかな減少を示した。次にその後30分間刺激を加えない(安静時間)で再度同様の矩形変形を加えた。2回目の矩形変形に対する応答は1回目の応答と同じであった。しかし、この矩形変形と矩形変形の間で短い矩形変形(伸張維持時間1分:以下パルス変形と呼ぶ)を加えると、2回目の矩形変形に対する応答を示さなくなることがわかった。安静時におけるパルス変形の印加回数を、1回から30回まで変化させても、2回目の矩形変形に対する応答は変わらなかった。さらに、伸張刺激の後(収縮せずに)にさらに伸張刺激を加えても、この2回の変形に対する細胞の応答は同じであった。これらの結果から、安静時に加えられたパルス変形の履歴が2回目の矩形変形に残っているといえる。パルス変形の伸張維持時間および伸張と収縮の組み合わせ変形がこの履歴現象にとって重要な因子であることがわかった。今後、細胞内の張力応答の起源である、アクチンネットワークとミオシンのリン酸化を調べる。また、細胞コロニーにおける個々の細胞と集団としての連携としての応答を明らかにする。
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