本研究の目的は、1:共役ポリマー単一分子の配座を特定するための光学顕微鏡法の開発、2:その顕微鏡法を用いて共役ポリマー単一分子の配座の研究、である。 前年度は高分子配座を吸収楕円体として直接測定できる新しい蛍光顕微鏡法を開発した。本年度はこの顕微鏡法を用い、共役系ポリマーMEH-PPVのマトリックス中の吸収楕円体を測定し、実際の配座を特定するため分子力学法のシミュレーションを行った。結果として、MEH-PPVが貧溶媒のZeonexマトリックスでdefect cylinder、良溶媒のポリスチレン(PS)マトリックスで二種類のdefect coilとのコンフォメーションをとっていることが分かった。更に、それぞれのコンフォメーションが光物理的特性(蛍光のintermittency、蛍光スペクトル)との強い相関を持つことが解明し、MEH-PPV中のexcitonの局所化の原因が明らかになった。 一方、共役系ポリマーの化学構造がコンフォメーションや光物性に与える影響の研究も進めてきた。この研究では、ポリチオフェンを主鎖とし、ポリスチレン(PS)を側鎖に持つグラフト共重合体(PT-PS)を測定対象とした。単一鎖のPT-PSでは指数関数的な連続した強度の減少が見られ、これはエネルギー移動が起こらず各セグメントが発光しているためだと考えられる。このことはPT-PSの単一分子からの低い発光偏光比からも分かる。 以上、これらの結果より、共役系高分子のコンフォメーションや化学構造と光物性には強い相関があり、特にコンフォメーションの違いがエネルギー移動の有無に大きな影響を及ぼすことが分かった。
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