研究概要 |
地球核最上部の地震波速度構造を推定するために,当該領域を這うように伝播するSmKS波群を収集した.1990年から2003年に発生した探さ200km以深のやや深発・深発地震87個を観測した全世界の広帯域地震観測点442点の記録から,震央距離120°〜180°の良好な記録1211本を選び出した.震源過程の複雑さを減じるために,周期10秒から50秒のバンドパスフィルターを適用し,単純な波形を選び出した.S3KS-S2KS波の走時差はPREMから期待される値より,わずか平均0.3秒大きいだけであったが,その他の代表的な地球モデルであるiasp91,SP6,ak135による予測値は広い震央距離の範囲で観測走時差より1秒以上大きかった.しかしながら,SmKS(m=2,3,4,5..)波群からm=4以上の各位相の走時解析からこれ以上詳細な解析は長周期波形を用いているので困難である.そこで,波形から直接最適な地震波速度構造を推定するために,Reflectivity法による波形あわせを行った.PREMを初期モデルとして,外核最上部のP波速度構造だけ変化させた場合,外核トップでのP波速度が7.95km/s,最上部90kmの範囲でP波速度を直線的に増加させ,CMBから90km以探ではPREMの構造と一致するモデルが波形の一致が最も良かった.また,最初にマントル最下部のS波速度を変化させた場合も,S波速度がマントル最下部30kmの範囲で10%減少させたモデルが波形の一致が良かった.このマントル構造からさらに外核最上部のP波速度を変化させた場合でも,外核トップでのP波速度が8.00km/s,最上部でP波速度が直線的に増加する範囲が140kmという構造が波形の一致が最も良かった.このような予備的な解析から外核最上部約100kmはPREMよりわずかにP波速度が小さい低速度層の存在が示唆される.
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