研究概要 |
本研究のこれまでの解析によって,地球流体核の最上部には地震学的低速度域が存在することが示唆された.今年度は,さらに詳細な構造を議論するための基礎的なステップとして,コア・マントル境界(CMB)のトポグラフィーを推定した.利用した地震波は,P4KP波と呼ばれる流体核内部で3回反射する波で,PcPというコアの表面で反射する地震波との走時差を取ることによって,地震の発生時刻の不確かさや,地殻や上部マントの不均質性を除去する.世界中の地震観測網から,362個ものデータを収集した.これによって,CMBを広くカバーすることができた.測定したデータに,地球の楕円体補正,マントル不均質の補正を施した後,まず最初に,マントル最下部厚さ150kmの範囲の速度不均質パターンを推定した.その影響を差し引いた後,CMBトポグラフィーを推定した.波線のパターンから,球面調和関数における次数2と4の係数だけを求めた.数値実験に基づくと,次数2のパターンはマントル最下部の速度不均質パターンによる影響が残るが,次数4のパターンは比較的良く推定できることを確認した.次数2と4の係数から合成されたCMBトポグラフィーは,振幅が±2km未満であり,オーストラリア,中央太平洋,北大西洋,南アフリカで沈降,南太平洋と中東で上昇が見られる.一方,次数4だけに注目すると,振幅は±1km未満,環太平洋域とハワイならびに南アフリカで沈降が見られる.このパターンは,太平洋とアフリカ直下のマントル最下部に重たいものを仮定したマントル対流から予想されるCMBトポグラフィーのパターンとよく似ている.
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