研究概要 |
神岡・池ノ山山頂において気圧観測を行うため,観測装置APDL-1000Sの導入を行った.装置に用いられる一部の部品(クロック)が入手できないことが判明したため,急遽メーカーと相談して代替品を使用することにした.このため,製品価格が大幅に下がった反面,消費電力が多少増加することとなった. 導入されたAPDL-1000Sを用い,東京大学海洋研究所において試験観測を行った.その結果,動作全体としては良好であるものの,微小なステップ状ノイズが混入していることがわかった.このノイズの大きさは1Pa程度であり,山頂観測に重大な影響を与えるものではないが,データの解釈において課題を残した. 装置の導入と並行して,山頂観測の実施のための準備を進めていった.地権者への説明,地元土建業者との相談などを行っている最中に,観測地点へ通じる林道で大規模な土砂崩れが発生し,通行止めになってしまった.このため,いったんは研究計画の見直しや延期も検討したが,復旧のめどがまったく立たないという役所の説明をきいて,もう一本の別の林道を使うことを決断した.このルートは大幅に遠回りであるうえに危険な道であり,山中での作業時間の確保において制約を受けることになった.また,重機を運搬することが困難になったため,観測小屋の建設を断念せざるを得なくなった. 以上のようなさまざまな問題が発生したため,当初の予定とはかなり異なる形とはなったが,平成18年10月に山頂観測を開始することができた.11月にバッテリー交換のために再度現地を訪れたが,装置は正常に動作しており良好な記録がとれていることを確認した.まだ2週間程度のデータしか手元にないため,詳しい解析はできないが,地上と地下の気圧の比から推定される大気のスケールハイトが,気温に対応して系統的に変化している様子を読み取ることができる.
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