研究概要 |
岐阜県神岡の鉱山トンネル内に設置された超伝導重力計は,きわめて安定した環境により,国内最高レベルの品質の重力連続記録を生産している。この記録を最大限に活用して,地球深部の構造やダイナミクスに迫るためには,地表付近の流体に由来する観測ノイズを極力取り除かなければならない。こうした目的のため,平成18年度に,超伝導重力計のほぼ真上に位置する池ノ山山頂に気象観測点を建設し,気象観測装置一式を設置した。平成19年度は,主としてその点検。整備,日射センサーの追加,および予備的なデータ解析を行った。 池ノ山観測点には,6月と10月の2度にわたって点検に訪れた。前年度に斜面の崩落があり通行止めになっていた林道は,補修がすんで通行可能になっていた。観測の中心となるAPDL-1000S気象観測装置は,正常にデータを記録していたが,クロックのずれが設計値よりやや大きく,のちのデータ処理のうえで面倒な問題を残した。補助的に設置したHOBO Weather Stationも正常に動作していたが,6月に追加した日射量センサーは接触不良のために誤動作し,10月に点検するまでまったく記録がとれなかった。 山頂の気圧データと,トンネルの入口付近(山麓)および内部(重力計室)で記録された気圧データとを合わせて,気圧変化の重力への影響について予備的な解析を行った。トンネル内の気圧は,作業などによる人的な擾乱が大きく,精密な解析には使用しにくいことが判明した。そのため,トンネル入口の記録と山頂の記録を比較した。両者の気圧値の比は,静水圧的な値から系統的にずれ,日変化を示すことがわかった。これは,日射によって駆動される局所的な大気循環の影響が表れていることを意味する。重力変化に寄与する静的な部分だけを取り出すため,地形も考慮に入れた簡単なモデリングを試みた結果,補正の精度に多少の向上が見られた。
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