研究概要 |
超伝導重力計による精密重力観測に影響する環境起源のノイズ,とくに大気の影響を取り除くための試みとして,岐阜県神岡の観測点の周辺における気象観測を行ってきた.平成20年度は,その最終年度として,これまでの観測の継続と,撤収作業,およびこれまでに得られたデータの解析などを行つた.7月に池ノ山山頂観測点へ訪れた際,観測装置が大きな損傷を受けていることがわかった.気圧計の大気圧ポートが変形し,雨量計はますの固定器具が破損して傾いていた.この冬は積雪が比較的多かったようで,これらの被害は積雪による荷重またはなだれによるものと推定される.また,これと直接の関係があるかどうかははっきりしないが,APDL-1000S気象観測装置のクロックが大幅に狂っていた.これらは,今後積雪地帯における越冬観測を行う上で,解決すべき課題となる. データ処理については前年とほぼ同様で,坑内の気圧計記録に重畳した人工的なノイズの存在に悩まされた.また,山麓観測点はシステムの不具合のためデータが得られなかった.そこで,より広い範囲の観測データを一括処理して重力補正を行うための理論を見直した.その結果,凹凸(地形)のある半無限弾性体の表面に一般の分布をもつ圧力がかかった場合の,変形および重力変化を求めるための新しい理論を開発することに成功した.しかし,これを実際に適用するためには,今より2倍程度密度の高い気象観測網が必要であり,それを展開するための準備をしている段階で時間切れとなってしまった. 10月には池ノ山観測点へ再度訪れ,気象観測装置を撤収して原状に復帰させた.山頂での観測は約2年間行ったことになるが,次の機会が得られるまで,いったん終了となる.
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