研究分担者 |
多田 隆治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30143366)
橘 省吾 東京大学, 大学院・理学系研究所, 助教 (50361564)
関根 康人 東京大学, 新領域創制科学研究科, 助教 (60431897)
鈴木 捷彦 海洋開発機構, 地球内部変動研究センター, グループリーダー (70251329)
後藤 和久 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (10376543)
|
研究概要 |
本研究課題は,原生代初期に生じた大規模環境変動である全球凍結と酸素濃度増加の関係に注目し,当時の地球システム変動を明らかにすることを目的とする。 平成19初年度は,原生代初期の地球環境変動を記録するヒューロニアン累層群(カナダ,オンタリオ州)及びマーケットレンジ累層群(米国,ミシガン州)の学術調査を8月13日〜23日に実施し,採取した岩石4料を用いて有機物の炭素同位体分析,オスミウム同位体分析,鉛同位体分析,硫黄同位体分析などを行った。 オスミウム同位体分析の結果,ヒューロニアン累層群ブルース層(氷河堆積物)の直上で,大気中の酸素濃度の上昇が開始したことを示唆する証拠を発見した。また,ブルース層より上位のサーペント層では,酸素濃度が低いことを示唆する硫黄同位体比の質量非依存性分別効果がみられることを発見した。さらに上位の,ゴウガンダ層〜ロレイン層においては,有機炭素の炭素同位体比のきわめて大きな負異常を発見した。この負異常は,マーケットレンジ累層群エンチャントメントレイク層〜メスナード層でも確認され,氾世界的なイベントであった可能性が示唆される。 炭素同位体比の大きな負異常は,ゴウガンダ氷河時代において大量に貯蓄されたメタンハイドレートが,氷河期の終了に伴い,地球史上最大級の崩壊を起こした可能性を示唆する。その直後に大酸化イベントが生じたことは,メタンによる超温室状態により,大陸から海洋へと栄養塩が大量に流れ込み,光合成生物の活動が活発化することが原因であった可能性が示唆される。
|