研究概要 |
平成20年度は,ヒューロニアン累層群(カナダ・オンタリオ州)第二の氷河性堆積物であるブルース層の堆積年代決定と他地域における氷河性堆積物との対応関係の解明,および北欧(フィンランド)に分布するカレリア累層群の学術調査・岩石試料採取を行い,原生代初期の氷河作用と大気中の酸素濃度上昇イベントとの因果関係,当時の汎世界的な地球システム変動に関する研究結果の総括を行っだ. まず,ヒューロニアン累層群ブルース層直上にオスミウムの濃集を発見した.さらに,レニウムーオスミウム法による放射性元素年代決定を行った結果,この氷河期の年代が約23億年前であることが判明した.このことは,ブルース層が南アフリカ共和国に分布するタイムボールヒル層の氷河性堆積物に対応していることを示唆する.オスミウム同位体比とその濃集は大気中の酸素濃度上昇を強く示唆する.これはタイムボールヒル層にみられる酸素濃度上昇の証拠(硫黄同位体の質量非依存性分別効果の消失)と調和的である. 一方,ブルース層の年代と層序の関係から,ヒューロニアン累層群ゴウガンダ層が,約22億2200万年前の南アフリカ共和国のマクガニンダイアミクタイト層(このときの氷河作用が全球凍結であったという証拠が得られている),フィンランド共和国のウルッカバーラ層にそれぞれ対応している可能性が高いことがわかった.そこで,2008年9月26日〜10月5日にフィンランドにおいてフィールド調査を実施した.調査では上記のウルッカバーラ層とその上位の地層から岩石試料を採取し分析を行った.その結果,ヒューロニアン累層群ゴウガンダ層上部とロレイン層に見・られる,著しい風化作用から示唆される温暖化が,ウルッカバーラ層とその上位のコリ層でも確認された.したがって,約22億2200万年前の氷河期後に生じた急激な温暖化が汎世界的イベントであったことが確認された.
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