研究概要 |
小惑星模擬表面の不規則さを表わすパラメター(表面凹凸度や粒径分布、鉱物組成)を定量化し、可視から近赤外線波長域にまたがる幅広い領域で光散乱強度の測定を行って、表面の不規則性を示すパラメターと、光散乱特性との関係を調べるために、今年度、可視域の多位相角同時分光計光学系に冷却CCDを取り付けた装置の校正を開始した。その結果、近赤外分光計のみでは原因が特定できていなかった、波長方向の見かけの感度パターンを引き起こす原因、すなわち、装置内の光学素子を特定することができ、分光計のデータの精度をより詳細に評価できるようになった。 独自に開発した波長に比べて大きな基本粒子からできている集合体による光散乱法(グルーピング法,Okada et al.2007)を拡張して、充填率30%までの、疎な空間分布をした多重粒子による散乱特性の計算手法を完成させた(Okada et al.2009)。この手法をレゴリス層による光散乱過程に適用し、過去に得られた散乱強度と位相角の関係を測定した実験結果の特徴を再現できることを示した。 初年度の実験室測定により、粉の粒子径が波長に比べてじゅうぶん大きい場合には、塊と粉による光散乱特性に違いが見られないことが示しているが、小惑星イトカワのクローズアップ画像からも、イトカワ表面のレゴリス最小サイズはサブミリメートル〜ミリメートル程度である可能性が高い。イトカワ表面でレゴリス粒子を供給する衝突破壊過程について検討し、そのようなレゴリスが衝突で生成可能であることを示した(中村,国立天文台研究会にて発表)。
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