研究概要 |
本研究計画で前年度に実施した白鳳丸KH-08-3次研究航海で回収した流速計のデータを解析し,深層循環の次のような性質を明らかにした。日本東方の北緯40度線では,深層循環流が日本海溝の沖側斜面域からそのすぐ東方にかけて流れており,5~8か月の継続期間をもって位置を東西に変えていることがわかった。計測期間の初めの5か月は海溝の沖側海域,次の8か月は海溝斜面域,最後の5か月はそれらの間の海域に位置していた。測流期間の最初と最後に行ったCTDO_2観測によると,深層循環の運ぶ深層水の溶存酸素に有意な特徴はなかったが,降下式音響ドップラー流速プロファイラーで測定した音波の反射強度は深層循環流の周辺で小さく,深層水の特徴を示している。こうした結果をもとに,流速と水塊に関する解析をさらに進めているところである。 また,我々の取った観測データの解析を進め,多くの論文を公表した。すなわち,2004,2005年の白鳳丸航海で取得したシャツキー海膨南西測線でのCTDO_2データにより深層循環の構造と深層水の特性を明らかにした論文(Kawabe et al.,2009),同じ測線で取った測流データにより深層流の位置と構造の時間変化を明らかにした論文(Yanagimoto et al.,2010),および2003年の白鳳丸航海で取得したCTDO_2データや国際研究計画WOCEのデータなどを使ってハワイ海嶺南方の深層循環分枝流の構造と流量を明らかにした論文(Kato and Kawabe,2009)を,Deep-Sea Research Part 1に印刷公表した。さらに,深層循環を中心に太平洋海洋循環の観測に基づく描像をまとめた論文(Kawabe and Fujio, 2010)をJournal of Oceanographyに印刷中である。
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