研究課題/領域番号 |
18340143
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松野 健 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (10209588)
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研究分担者 |
吉川 裕 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (40346854)
磯辺 篤彦 九州大学, 総合理工学研究院, 助教授 (00281189)
石坂 丞二 長崎大学, 水産学部, 教授 (40304969)
張 勁 富山大学, 理学部, 助教授 (20301822)
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キーワード | 陸起源水 / 黒潮中層水 / 鉛直拡散係数 / エクマン層 / 漂流ブイ / 基礎生産 / 希土類元素 / 栄養塩 |
研究概要 |
表層流の鉛直分布について 2006年10月に東中国海陸棚域の五島列島南西海域において、漂流ブイの特性の評価および表層流速の鉛直分布を計測するため、表層ドリフターに流速プロファイラー(ADCP)を連結して、流速の鉛直分布を計測した。海面下5-20mの深さで、数cm/sの大きさの相対流速が観測され、表層境界層内での流速分布の変化が観測されたが、風との対応は必ずしも明瞭ではなく、さらに観測データを蓄積する必要がある。 水温、塩分、栄養塩、クロロフィル、水中照度、基礎生産、乱流エネルギー散逸(ε)の鉛直分布の計測 上述の観測と同じ観測航海時にCTDによる水温、塩分、蛍光光度の鉛直分布、採水による栄養塩、クロロフィルの分布を計測し、並行して水中照度、基礎生産の鉛直分布を計測した。表層混合層の厚さは50-60mと比較的厚く、60-100mに水温躍層が、また、50-60m付近に塩分躍層とクロロフィル極大層が見られた。上述のドリフター追跡観測と並行して、微細構造プロファイラーによる乱流エネルギー散逸率の測定を行った。表層直下までデータ取得を目的として浮上方式を採用し、試験計測を兼ねて繰り返し観測を実施した。表層10m程度を除いて比較的小さかったが、混合層が厚かったため、拡散係数を見積もると表層では10^<-2>(m^2/s)程度の大きな値もしばしば観測された。 酸素同位体比および希土類元素の分析 上述の観測時に酸素同位体および希土類元素分析用の採水を行ったが、分析には時間を要し、今年度は、以前東シナ海陸棚域で採水したサンプルの分析とその解析を行った。その結果、陸棚上の底層で黒潮中層(400m深)と同じ希土類組成を持つ海水の分布が推定でき、陸棚上に比較的深い黒潮中層起源水が存在する証拠の一つが示された。 数値モデル実験 黒潮中層水の陸棚への進入に注目した数値実験を行い、夏季には台湾暖流の流量が大きくなることから、表層における黒潮の陸棚域への進入は抑制されるが、台湾暖流の勢力の弱い下層では明瞭な進入が見られ、陸棚域底層水の形成に有意な役割を果たしていることが示された。また、長江起源水に含まれる栄養塩が、長江希釈水の広がり域で、どのような物理過程で基礎生産に寄与するか、という視点から数値実験を行い、有光層下を広がることによって栄養塩を維持したまま広域に運ばれる可能性を示し、同時に基礎生産の大きい海域が南側に偏った形状になることに対して物理過程からの説明を与えた。
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