研究課題/領域番号 |
18340143
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松野 健 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (10209588)
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研究分担者 |
吉川 裕 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (40346854)
磯辺 篤彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00281189)
石坂 丞二 長崎大学, 水産学部, 教授 (40304969)
張 勁 富山大学, 理学部, 教授 (20301822)
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キーワード | 陸起源水 / 黒潮中層水 / 鉛直拡散係数 / 漂流ブイ / 栄養塩 / 基礎生産 / 希土類元素 |
研究概要 |
8月8日から18日にかけて実施された東シナ海陸棚域の韓国経済水域における淡青丸航海において、6台の漂流ブイを追跡しながら、水温・塩分・クロロフィル・栄養塩・乱流微細構造などの鉛直分布を繰り返し計測した。観測期間中は天候が平穏で、2007年の漂流ブイ観測で見られたような、顕著な塩分の上昇は見られなかった。これは、長江紀元水の希釈(塩分上昇)に、低気圧のような風による下層水の寄与が大きいことを示唆する。一方、平穏な気象条件が続いた中で、混合層直下にはクロロフィル極大層が継続して観測された。乱流微細構造の計測から混合層下での鉛直拡散係数を見積り、栄養塩の鉛直分布を用いて、鉛直拡散による下層からの栄養塩供給の大きさを評価した。あまり大きくない鉛直拡散でも、混合層下のクロロフィル極大を維持するには十分な栄養塩を下層から供給しうると見積もられた。また、希土類等化学トレーサーによる水塊構造の分析からは、陸棚下層には黒潮亜表層および中層水が広く分布していることを示唆する結果が得られた。以上のことより、本研究課題で設定した仮説、1)陸棚下層の栄養塩を、基礎生産が可能な表層に輸送する過程として、希釈水の広がりに起因する表層水の発散による鉛直流が大きな役割を果たしている、2)陸棚底層に分布する栄養塩の相当な部分は黒潮の中・深層に起源を持つ、について、1)に関しては、下層水を表層に輸送する過程として表層水の発散による鉛直流の役割が大きいことは確かであるが、その強制力は風によるものであることが示された。また、2)に関しては、上述のように少なくとも黒潮亜表層および中層の水が陸棚下層に広く分布していることが示された。
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