研究概要 |
オホーツク海高気圧は日本に極端な冷夏をもたらすことから、日本社会にとって極めて重要な現象である。高気圧が著しく発達した2003年の日本の夏は異常冷夏であった。夏季のオホーツク海は、同緯度帯の他の海洋と比較すると世界で最も寒冷な海洋である。2006年8月にオホーツク海中央部でのロシア観測船と日本観測船の2隻による高層観測を実施した。この観測によってオホーツク海高気圧の力学的、熱力学的立体構造を、GPSラジオゾンデによって解明することである。特に、オホーツク海高気圧の大気境界層に発生する下層雲や霧を伴う異常に低温な混合層の生成・維持・消滅メカニズムを理解することである。第2の目的は、観測結果を基に、客観解析、モデルなどを併用し、オホーツク海高気圧の発生メカニズムを解明することである。本年度は昨年度の観測データや過去の蓄積されたデータの解析を行った。観測データの解析の結果,霧や下層雲には二つのタイプがあることが観測された.一つは層積雲型の霧で,もう一つは層雲型の霧である.どちらの型も寒気移流,暖気移流の双方で霧が発生することも観測から明らかとなった.霧発生には暖気移流の重要性がこれまで指摘されてきたが,観測では寒気暖気双方の移流によっても霧が発生することがわかった.霧が発生している場合は,大気下層はほぼ中立に近い成層をしており,且つ海洋表層も中立の成層をしていた.さらに注目すべき点は,霧が発生しない事例が観測された点である.オホーツク海高気圧の下で,霧が発生する場合としない場合がある.霧が発生していない場合は,大気海洋共に,表層は安定な成層をしていた.
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