観測によってオホーツク海高気圧の力学的、熱力学的立体構造を、GPSラジオゾンデと放射ゾンデ観測によって解明すること、特に、オホーツク海高気圧の大気境界層に発生する下層雲や霧を伴う異常に低温な混合層の生成・維持・消滅メカニズムを理解することが研究目的であった。オホーツク海高気圧とそれに伴う下層雲の変動を理解するために、ロシア船と日本船の二艘の観測船にてロシアが領有権を主張しているオホーツク海の内部に入り、そこでラジオゾンデ観測を行った観測成果と、既存の客観解析データを解析してオホーツク海高気圧の力学、熱力学、大気海洋双方向作用の研究を行った。その結果オホーツク海の気象、気候に関して、以下のことを明らかにした。 1)オホーツク海高気圧の下層には、非常に寒冷・湿潤な混合層が形成され、それは大気と海洋の微妙な双方向の作用によって形成・維持されていることが、観測データの解析によって明らかとなった。言い換えると、寒冷な海洋が大気へ及ぼす影響についての事例が観測によって明らかになった、ということである。さらに下層大気の寒冷な混合層の生成維持消滅機構を解明した。 2)オホーツク海に流れ込む大気中の水蒸気のフラックスとその水平収束量について調べた。その水蒸気源は、太平洋からのモンスーンに伴う流れとともに、シベリア内陸部からもやってきていることが示された。
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