研究課題
本研究によって、四万十帯とくに四国徳島県牟岐地方に発達するメランジュとその周辺を画する断層(南阿波断層と命名)、および九州宮崎県延岡地方に発達する四万十帯と四万十帯北帯と南帯を画する延岡衝上断層について、詳細な調査、および断層等の分析を行った。その結果、新たなU-Pb年代決定法による詳細な付加過程の復元、鉱物脈中に発達する水一メタン流体包有物を用いた詳細な熱構造と岩石一水反応の時系列、それらの事件と地震断層の活動との時空間的関係などが明らかとなり、沈み込みプレート境界における数キロから10キロ程度の深さの断層活動、を描き出した。また、九州延岡では、延岡衝上断層の詳細な解析を行った。この断層は地質帯を分ける断層であり、海蝕台に全破砕帯が露出する。その分析から明瞭なシュードタキライトが発見された。またこの破砕帯には数百条を数える直線的で数ミリ程度のガウジを持つ断層、大量のクラックを埋める炭酸塩、ケイ酸塩の鉱物脈などが発達することが明らかとなった。水一メタン流体包有物から温度圧力の推定を行った。その結果、この断層は地下10数キロ程度の深度温度には200℃から300℃程度の深さで活動したものであることが判明した。この深度は、現在のプレート境界地震発生帯あるいは付加体を切る順序外断層(out-of-sequence turust)の深部であることとなる。鉱物脈および断層帯構成岩石の化学的特徴はこの断層の活動に伴う水一岩石反応が、移流を伴う解放系において、短期間で進行した可能性を強く示唆した。
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