研究概要 |
美濃帯南部犬山地域の坂祝セクションにおいて,トリアス・ジュラ系チャートを詳細に観察するとともに,系統的な試料採取を行った.同セクションは,地層の変形が弱く連続性が良いうえ,放散虫化石の産出も豊富であるため,古海洋研究にとって国際的な模式地となると期待される.坂祝セクションの層状チャートにみられるラミナ様の堆積構造は,層理を形成するサイクルよりも短期のミランコビッチサイクルを表現していると予想される.パンサラサの古海洋は緯度によって周期的な環境変動を受ける程度が異なると予想される.そのことを検証するために,フィリピンの北パラワン地塊を構成するチャートについて,詳細な露頭観察と試料採取を計画し,3月末に実施する.坂祝セクションおよび北パラワン地塊で採取した試料は,次年度以降に酸素・珪素同位体測定に供されることになる. 放散虫生層序については,坂祝セクションにおいて,トリアス・ジュラ系境界付近を集中的に検討した.ジュラ系の下底については,まもなく国際ジュラ系層序小委員会での決定がなされる手はずになっているので,そのことを意識して研究を先行させた.トリアス・ジュラ系境界と酸素・珪素同位体曲線との関係を明らかにし,酸素・珪素同位体層序の有用性を示すステップにしたいと考えている. 研究成果の一部は,第7回国際ジュラ系会議(2006年9月ポーランド),第2回IGCP516シンポジウム(2006年11月フィリピン)などで発表した.
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