研究概要 |
美濃帯犬山地域の坂祝セクションにおいて,トリアス・ジュラ系チャートの検討を継続するとともに,関東山地秩父帯の両神山地域において,詳細な露頭観察と試料採取を実施した.本研究課題において検討した,坂祝セクション,両神山セクション,フィリピン北パラワン地塊のセクションは,中・古生代に超大洋パンサラサ海の異なる海域で堆積した遠洋性堆積物を代表し,超大洋における古海洋事件の地域差を検討するのに適している.それらの地域において,共通の基準により岩相的特徴からチャートをいくつかのタイプに区分し,岩相層序を立てた.また,放散虫化石をもちいた年代決定を行った結果,それらが同年代の地層であることが明らかになった.H20年度の最終段階には,中国内陸部(湖北省京山地域ならびに武漢地域)に分布する揚子地塊の浅海域で堆積した古生代ペルム紀のチャートについての検討を進めた.これらの野外地質調査により採取した試料は,今後,酸素・珪素同位体比測定ならび各種の地球化学的検討に供されることになる.これらの地球化学的検討により,超大洋パンサラサ海の長期環境変遷が解明される.今年度の研究により,各地の遠洋性堆積物の岩相層序と放散虫生層序については所期の成果をあげることができたが,同位体の検討については技術的な問題が解決せず,今後の検討課題として残された. なお,研究成果の一部は,日本地球惑星科学連合(2008年5月千葉),日本古生物学会(2008年7月仙台),第33回万国地質学会議(2008年8月オスロ),日本地質学会(2008年9月秋田)などで発表した.
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