研究概要 |
化学合成群集とは,地下から供給されるメタンや硫化水素を共生バクテリアに利用させてエネルギーを得る大型無脊椎動物の群集のことをいう. 化学合成群集を構成する分類群は, 白亜紀以降大きく変化したことが知られている. とくに, 優占種が腕足類から二枚貝へと置換したことや, 新生代にはいってシロウリガイ類が爆発的に放散をとげたことは注目されている. しかしながら, その原因については未だ明らかにされていない状況にある. 本研究は化学合成群集の時代変化の原因を解く鍵として,メタン湧水場における地下構造や地下流体の挙動に着目する. 湧水の流量や様式が群集構成に影響を及ぼすことは,現生の群集で報告されている. しかしながら, 地質時代における湧水サイトでの流体様式を復元し,それと群集構造を対比させた研究例は少ない.群集構造の時代変化がどのような特性の湧水場で認められるのかを解明することが, 本研究の目的である. この目的を達成するため,以下の研究課題を設けた. (1) 白亜紀および新生代の大規模なメタン湧水性石灰岩体について,露頭観察やボーリング調査,安定同位体比の分析をもとに, 化学合成群集が生息していた地下構造を復元する. 白亜紀の代表として高知県四万十市の佐田石灰岩, 新生代の代表として長野県の中新統赤怒田・穴沢石灰岩を研究対象とした. (2) それぞれの石灰岩体において,化石群集の構成や産状を復元した地下構造と対比させ, 湧水様式が群集構造に及ぼす影響についてのモデルを構築する. (3) 他地域の湧水性石灰岩体についても上記のモデルとの比較を行い. 化学合成群集の分類構成が大きく変化した白亜紀以降の湧水の挙動・地下構造の特性を抽出する.
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