研究概要 |
渦鞭毛藻類は浮遊細胞と休眠細胞の形態が著しく異なるため,一つの生物が二つの異なる生物名-すなわち浮遊細胞と休眠細胞が異なった生物名を持つこととなったことが渦鞭毛藻シスト研究に混乱をもたらしてきた。この混乱を解消するために,両者の対応関係の解明は浮遊細胞と休眠細胞の形態形質を拠り所として研究が進められてきたが,必ずしも十分な結果が得られてきていなかった。本研究ではこれまで蓄積した形態情報に加えに,分子生物学的手法を組み合わせることによって,より精度の高い,確実な遊泳細胞と休眠細胞との対応関係を確立し,渦鞭毛藻の系統分類と進化過程の考察に寄与できた。今年度は平成18年度に確立した分析手法を用いた従属栄養種群のProtoperidinium属Monovela群やPolykrikos類,独立栄養種群のGymnodinium類, Cochlodinium類の遊泳細胞やシストの遺伝子解析を実施するともに走査型電子顕微鏡(JEOL JSM-5310LV)を用いた形態観察を行った。 その結果,Polykrikos類では表面に編み目構造を持つシストをP. schwartzii,棒状から棚状突起物をも備えたシストをP. kofoidiiと同定してきたが,遊泳細胞との対応関係が全く逆であることを明らかにした.また, Protoperidinium属Monovela群ではProtop. americanumに形態的に類似したシストはP. partenopesも生産することを明らかにした.さらに,球形・褐色で表面が刺状突起物で覆われたシストを生産する種を発見し,Protoperidinium tricingulatumとして新種記載を行った.
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