本研究の目的は、地球の進化に重要な役割を果たしているにもかかわらず、未解決問題が多く残されている花崗岩類の成因について、詳細なデータが蓄積されつつある西南日本-韓半島を対象とし、年代学、岩石学、および地球内部ダイナミクスの手法を統合して、その全体像明らかにずることである。未解決問題として特に重要な、花崗岩質マグマ生成の物質源、熱源およびダイナミクスの3点に注目し、それぞれを個別の手法によって掘り下げると同時に、その生成場を統合的なモデルによって解明することを目的とする。 本年度は、西南日本、四国地方~中国地方中央部において、中央構造線から日本海にぬける南北およそ250km、幅40kmの南北横断全域において花崗岩の年代測定を行った。花崗岩99試料に含まれるジルコンおよそ2000粒について、Nd-YAGレーザーアブレーション+ICP-MSによってU-Pb同位体年代測定を行った。その結果、(1)約95~33Maに移動が及ぶこと、(2)量的に主要な活動はおよそ95~60Maに集中し、それ以降の若い活動は量的には少ないこと、(3)およそ北に向かうほど年代が若くなること(ただし、各緯度ではおよそ±5~10Maの幅がある)、(4)(3)の傾向の中で、80~85Maでもっとも活動の南北方向の幅が広く、中央構造線から北緯35.3度付近まで広がっていることが分かった。また岩石学的な制約から、これらの花崗岩は下部地殻の溶融によって生じた可能性が高いことが分かり、数値シミュレーションの結果とあわせた考察から、海嶺沈み込みの熱が北に向かって伝播したと推測される。
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