研究概要 |
1.試料の微量元素・同位体分析 オマーンオフィオライトおよび伊豆小笠原弧の火山岩に対する微量元素分析および同位体分析を行った。また,スラブ-マントル間の物質移動を精密に見積もるため,オマーンオフィオライト海洋地殻の断面(枕状溶岩-シート状岩脈-ガブロ)に対するB含有率・B同位体比の測定を行った。 2.化学分析値の解析とまとめ 全岩および単斜輝石斑晶の分析により得られたオマーンオフィオライト火山岩の微量元素組成は,拡大軸から沈み込み帯への移行過程で規則的に変化していることが明らかとなった。拡大軸ステージのマグマは,K,Pb,Srなどの増加が見られないMORB的な組成を示す。これに対して,沈み込み最初期ステージでは,K,Pb,Srに富むソレアイト系マグマが特徴的に出現する。沈み込みがさらに進行すると,同様にK,Pb,Srに富み,さらにV字型~U字型の特徴的な希土類元素パターンを示すカルクアルカリ系マグマ(ボニナイト)がマグマ活動の主体となる。沈み込み開始以降のマグマの微量元素組成およびSr・Nd同位体組成は,沈み込む角閃岩相スラブから放出された流体により汚染されたマントルの部分融解によって基本的には説明できるが,ボニナイトの組成を説明するためには,ソレアイト系マグマの場合に比べて,スラブのより高温の領域(700℃以上)に由来する流体の寄与が必要である。沈み込み帯形成最初期段階においてマグマの微量元素・同位体組成が時間とともに規則的に変化したこと,それが角閃岩相スラブ由来の流体の寄与の変化によることが明瞭に示されたことは本研究の大きな成果である。
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