研究課題
下部マントルのレオロジーは珪酸塩ペロフスカイト(Pv)とフェロペリクレース(Fp)の2相系レオロジーとして捉えることができる。ここで、Fpの粘性率はPvのそれに比較して2-3桁低い。従って、混合相においてFpが連結構造を持つ場合には、全岩のレオロジーがFpに制約される可能性が高い。この連結度を実験的に調べるために、高温高圧その場電気伝導度測定を行った。Fpの電気伝導度はPvの電気伝導度よりも数桁高いため電気伝導度をモニターすることによって連結の程度を知ることができる。実験は、Pv+Fpの前駆物質(低圧相)であるリングウッダイト(Rw)を20GPa、1773Kの条件で合成し出発試料とした。電気伝導度測定実験は、26GPa、1400-1700Kの条件で、RwからPv+Fpへの相転移および組織時間発展を調べた。電気伝導度は、Pv+Fpへの初期相転移後、時間経過とともに急激に高くなり、その後、非常にゆるやかに減少した。この変化の割合は、低温である場合には非常にゆっくりであった。以上の結果は、Pv+Fpへの相転移では、Fpの連結組織が形成され、その後の組織発展に伴って、その連結が切断されていくことを示していると思われる。特に、低温の場合には、組織発展の速度が非常に遅いため、Fpの連結が長時間保持される。この結果は、前年度行った回収試料の2面角測定から予想していた結果と調和的である。沈み込んでいくスラブでは深さ660km付近では非常に低温である。従って、Fpの連結構造が地質学的時間スケールにおいても保持されることが予想される。この場合には、スラブ内でRwから相転移したPv+Fp相のレオロジーはFpに制約されることとなり、粘性率においてはPvのレオロジーから予想されるよりも数桁低くなり、マントル対流の流動様式に大きな影響を与える。
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