研究概要 |
平成20年度は,藻類の種類による金属元素の濃集の程度の違いを確認するために,平成19年度までの緑藻類のアナアオサ,褐藻類のワカメに加えて,褐藻類のタマハハキモクと紅藻類のフダラクの計4種類を大阪湾周辺の15カ所で採取し,金属元素分析を行った。それぞれの藻類は,採取後直ちに冷凍し神戸大学から名古屋大学に郵送した。名古屋大学において人工海水ならびに超純水で洗浄の後,凍結乾燥を行い,ICP質量分析計により13元素(Mg, Cr, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, As, Se, Cd, Sn, Hg, Pb)を分析した。 各元素間の相関から,それぞれの元素に対する藻類の吸収の仕方には明らかな違いがあり,元素毎に指標藻類が異なることが明らかとなった。特に,同じ褐藻類でありながら,ワカメとタマハハキモクでは,濃集する元素に違いがあることが示された。また,より海水汚染の進んでいる湾奥部(大阪市周辺)で採集した藻類が,淡路島沿岸で採取した藻類に比べて高濃度を示した。従って,元素毎に指標藻類が異なるが,海水汚染を反映する「海水汚染指標」として有用であることが示された。 4種類の藻類のうち,タマハハキモクはCr, Mn, Co, Cu, Pbの汚染指標藻類として,ワカメはNi, Zn, Se,フダラクはZn, Snの汚染指標藻類として利用可能なことが明らかとなった。これらの得られた結果について,論文の執筆中である。
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