研究概要 |
平成21年度は,前年度までの緑藻類のアナアオサ,褐藻類のワカメ・タマハハキモク,紅藻類のフダラクに加えて,褐藻類のカジメ,紅藻類のマクサを含めた計6種類を、2009年6月大阪湾周辺の19カ所で採取した。それぞれの藻類は,採取後直ちに名古屋大学において超純水で洗浄の後,凍結乾燥を行い,ICP質量分析計により13元素(Mg,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,As,Se,Cd,Sn,Hg,Pb)を分析した。淡路島側に比べて大阪市側の藻類の方が,MgやSe,Hgを除く金属元素含有量が高く,汚染を反映する指標として利用と考えられる。 一方,藻類が海水からどの程度の濃縮度で金属元素を取り込むかを明らかにすることを目的とし,藻類を採取した2009年6月に加えて,2009年10月と2010年2月の計3回,藻類採取地点付近で海水試料の採取を行った。海水試料中の金属元素の定量は、高マトリックスのために一般に困難であるが,ICP-MS法によりAsとMnを,キレートディスクカートリッジ法によりCo,Ni,Cu,Zn,Cdといった元素の定量が可能であることが明らかとなった。分析法の検討に時間を要し,全ての採取海水試料についての分析が終了していない。しかし,海水中の金属元素濃度との対比の結果,藻類の金属元素濃度は必ずしも海水のそれとは比例関係になく,藻類ごとに濃縮係数を決定するには至らなかった。海水汚染をより正確に評価するためには,各元素ごとに指標藻類を特定し,より正確な海水中の金属元素分析が必要であることが明らかとなった。
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