研究課題
造礁サンゴ骨格は、月から週の時間分解能で熱帯および亜熱帯の浅海域の古気候・環境情報を保持しうる試料である。サンゴ骨格の酸素同位体比の変化は、基本的には海水温と海水の酸素同位体比(塩分に相関)を反映する。しかし、サンゴには骨格の酸素・炭素同位体比が平衡値からずれるという「生物学的効果(vital effect)」が認められ、これは石灰化反応に内在する反応速度論的同位体効果によるものと考えられている。本研究課題最終年度にあたる平成20年度は、前年度までに得られた試料の分析を進めるとともに、Sr/Ca比、Mg/Ca比等の元素組成の分析を重点的に進め、これらの元素に関する「生物学的効果(vital effect)」を検討して、研究の取りまとめを試みた。本研究課題で実施したハマサンゴ(Porites australiensis)を用いた5段階恒温飼育サンゴ試料について、Sr/Ca比、Mg/Ca比に加え、U/Ca比等を分析し、骨格成長速度依存性を検討した。Sr/Ca比については、酸素同位体比にもられたものと同様の群体依存性が見出され、成長速度が速い群体ほどSr/Ca比が大きくなる傾向、すなわち低い水温を指標する傾向が見られた。安定同位体比に加えて、元素濃度に見られる反応速度論的効果の生成メカニズムについてもモデル検討を試みた。
すべて 2008
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Geophysical Research Letters 35
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