研究概要 |
金属線あるいは固体ロッド中に電流を流すとジュール加熱で温度が上昇し,材料表面から電子放出や材料の気化が起きる.これらは材料近傍の絶縁耐圧を低下させ,放電(シャンティングアーク)へと至る.本研究の目的は,シャンティングアークプラズマをプラズマイオン注入&成膜(PBII&D)に利用するための,更なる高品位化(高密度化,大体積化),複合(ハイブリッド)プラズマの生成,それを用いたPBII&D技術の確立である.高密度化にはプラズマの磁気駆動を利用し,大体積化はロッドの形状により行う.複合プラズマ生成は,雰囲気ガスや,磁気駆動用のレール材,ロッド材の組み合わせを変えることで行う. 窒素雰囲気中でカーボンシャンティングアークを生成し,窒素と炭素のハイブリッドプラズマの生成を試みた.スペクトルの観測より,得られたプラズマには窒素の励起原子,励起分子が含まれ,窒素気圧によってスペクトル強度が変化することが明らかになった.このプラズマを用いてCNx成膜を行った.シリコン基板上に生成した薄膜のN/C比率は,窒素気圧2Pa,ターゲット印加電圧-2kV,繰り返し周波数2Hzで0.58となった.この値は,窒素の圧力により変化することなどが明らかになった.またホルダー材としてチタンを,ロッド材としてカーボンを用いることで,固体源プラズマのハイブリッド化を試みた.CとNの場合同様に,TiとCの粒子がプラズマに含まれることなどが,分光計測より明らかになった.また,TiとCのハイブリッドプラズマを用いて成膜を行った結果,Ti含有のDLC膜が堆積することなどが明らかになった.
|