ファブリック型電極でのプラズマ生成を行うに当たり、まず電極として使用する絶縁体被覆導体線の材料検討を行った。柔軟性をもちかつ高耐圧の絶縁材料を備えた絶縁体被覆導体線の調査検討を行い、絶縁体厚が150μmのものを主な使用線材と選定した。その上で、1次元(撚糸状)・2次元(平織状)・3次元状(撚糸状構造の集積構造)にファブリック型電極構造を作製した。2次元構造を中心に検討し、その作製には絶縁被覆線用手動織機(SET100、18年度設備備品費)を使用した。作製した電極構造に数kHz〜数10kHzの交流電圧を2CH高圧電源(SAI-0612、18年度設備備品費)により印加したところ、1次元・2次元構造はもとより、従来手法では困難であった3次元構造を持った大気圧放電をヘリウムガス中で実現した。特に、1次元・2次元構造においては大気圧の大気組成ガス内においても2kV以下の放電開始電圧でプラズマ生成が確認された。これらの生成プラズマに対し、電極網内で結合するプラズマのネットワーク構造解析を開始した。 次に、実際の表面処理技術への応用を念頭に、2次元のファブリック型電極表面にプラズマを生成し、各種表面処理のためのプラズマシートの生成を行った。まず、単純な平織構造の表面処理シートを試作し、電極表面に生成されたプラズマの電子密度をミリ波透過法により測定したところ、1-3x10^<12>cm^<-3>の高電子密度となっていることを確認した。さらに、大気組成ガス内でのプラズマ生成において生成されたオゾン密度を測定したところ、直径20cmのチャンバー内で線密度として10^<16>cm^<-2>の高密度オゾンが電極領域より少なくとも数cm拡散して分布していることがわかった。これは、高イオン密度に伴うガス流の誘起・活性種の輸送現象を示唆している。また、実際にテフロン表面の親水加工処理を試行したところ、有意な純水の接触角低下が確認された。
|