研究課題
基盤研究(B)
本研究課題では、「連結階層シミュレーション」モデルと呼ばれるミクロ階層の物理とマクロ階層の物理をつなぐ数値シミュレーションモデルを開発することにより、階層横断現象である磁気リコネクションの解明を目指した研究を実施し、以下の研究成果を上げた。無衝突プラズマ中で磁気リコネクションを誘発するミクロ階層における異常電気抵抗の発生機構として、磁気中性線近傍の有限振幅を持ったストカスティックな粒子運動(メアンダリング運動)に起因するもの、および磁気中性線での非等方なイオン速度分布の形成に伴うプラズマ不安定性に起因するものの2種類の物理機構が存在することを明らかにした。また、駆動源が存在する場合、非常に大きな面内静電場が発生し、この静電力とローレンツ力が釣り合った新しい平衡状態へ移行することも明らかにした。地球磁気圏プラズマを対象としたマクロ階層の物理の解析として、太陽風リアルタイムデータを上流境界に用い磁気流体シミュレーションにより、現実に発生している太陽風による磁気圏の動的なレスポンス(夜側におけるプラズモイドの発生等)の定性的な再現に成功した。さらに、地球磁気圏サブストーム現象の電気抵抗モデル依存性を調査し、定量的な解析には物理的根拠のある異常抵抗モデルの導入が必要であることを明らかにし、さらにミクロ階層でのプラズマ不安定性による異常電気抵抗の結果を、磁気流体方程式の中に取り込むためのモデル検討を行った。領域分割法を用いてミクロ階層とマクロ階層を同時にかつ無同着に解くことのできる連結階層シミュレーションモデルを考案した。プロットタイプの連結階層モデルを実装したシミュレーションプログラムを開発し、アルベン波の1次元伝播およびプラズマフロー流入現象に適応し、開発した数値アルゴリズムの適応限界・精度等の検証を行い、今後改良すべき問題点等を明らかにした。没入型3次元バーチャルリアリティ(VR)装置CompleXcopeで電磁粒子シミュレーションの結果を表示するソフトウェアを開発し、磁気リコネクションのシミュレーション結果をVR空間で解析した。その結果、イオンのメアンダリング運動と加熱機構の間の強い相関を明確に示すことができた。
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