研究概要 |
1.[Rh(II)_2(bza)_4(pyz)]_nへの重水素分子の吸蔵状態の解析:昨年度測定したRh錯体中に取り込まれた重水素分子の重水素核NMRスペクトルは、少なくとも古典論による解析では重水素分子軸の2サイトフリップで説明できこのフリップ角が温度変化することが解った。重水素分子は一種類で説明できる。 2.[Cu(II)_2(bza)_4(pyz)]_nへの重水素分子の吸蔵状態:[Rh(II)_2(bza)_4(pyz)]_n錯体とほぼ同様な結晶構造を持つCu(II)錯体について、ピラジン配位子(pyz)と安息香酸イオン(bza)のフェニル基を重水素化し、これらの運動性を重水素核固体NMRスペクトルにより調べた。その結果、250K以上でこれらは180°フリップ運動をして入るものの、Rh(II)錯体に比べ運動が遅く、Cu(II)錯体のほうが、Rh(II)錯体よりも結晶格子は硬いことがわかった。さらに重水素ガス圧755mmHgで錯体中に取り込まれた重水素分子の重水素核固体NMRスペクトルの温度変化(25〜160K)を測定した結果、Cu(II)錯体では少なくとも2種類の運動性が異なる重水素分子が存在すると考えられる。Rh(II)錯体とこれより磁性が強いCu(II)錯体のいずれも現在のところ明確なオルト・パラ変換による線形の変化は観測されない。さらに磁性の強いMn,Co錯体へも研究を展開する。 3.マイクロコイルNMR:マイクロコイルNMRプローブの更なる改良を行い、スピン1/2の一次元Cu^<II>磁性鎖を持つ[CuCl_2(pyrazine)_2]_nの重水素化した単結晶(0.21×0.30×1.8mm)のシフト範囲±3000ppm以上に及ぶ重水素核NMRスペクトル線20本(期待される数)を、室温でわずか1時間の積算でS/N良く検出することに成功した。
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