研究概要 |
熱測定により,薄膜やナノチャネル水の静的・動的性質の解明に努めた。メゾポーラスシリカMCM-41細孔内で内部水のガラス転移は,細孔径の増大とともに160K,205Kと飛びとびに現れることを見いだした。 無機・有機ハイブリッド結晶[Ni(cyclam)(H_2O)_2]_3(TMA)_2・24H_2O(細孔直径1nm),Co(Hbim)_3TMA・20H_2O(細孔直径1.5nm),Cr(Hbim)_3TMA・20H_2O(細孔直径1.6nm)の熱測定を行い,ナノチャネル水の秩序化とガラス転移挙動を明らかにした。MCM-41と異なって,細孔壁は結晶の周期構造を有し,細孔水はその構造と整合するように低温で秩序構造を形成した。 ナノシート層間水を有する系Na-RUB-18結晶の熱測定を行い,水素結合ネットワークを形成しない水分子が194Kで配向秩序化の相転移を,106Kでガラス転移を示すことを見いだした。 細孔直径が1.1nmのシリカゲル細孔中のメタノール水溶液のエンタルピー緩和測定を行い,高濃度領域の挙動は水本来の水素結合ネットワークを形成しない系の挙動に対応し,非常に希薄な領域で水本来の構造形成が進むとともに,ガラス転移温度は組成とともに急激な変化を示し,純水の値160Kに近づくことを明らかにした。また,MCM-41細孔内に閉じ込めたエチレングリコール水溶液およびヒドロキシルアミン水溶液の熱挙動を追跡し,前者では組成χが小さくなって水の水素結合ネットワークが発達するに従ってT_gが異常に上昇することを,後者では液体-液体相転移の存在を示唆する現象を発見した。 これらの結果から,水は低温で特徴的な水素結合ネットワークを形成し,そのネットワークの発達に応じて構造緩和時間,従ってガラス転移温度に飛びを示すものと理解される。
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